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1960年 昭和35年 1月 週刊現代 「海女もフンガイする黄金の海」


1960年 昭和35年 1月 週刊現代  

今回の注目記事であります。

「海女もフンガイする黄金の海」

というタイトルなのであります。

これだけでは、内容がわからないと思うので

端的に記事を要約しますと

東京都民の糞尿を海に投棄して、のち千葉に漂着している。

ということなのであります。

下水道の設備がまだ整っていなかった時代、「投棄」という行為も、「処理」という

カテゴリーに入っていたのであります。

東京湾では、投棄禁止ラインがいくつかあり、

館山市洲崎を中心とした半径1万メートル以内も禁止ラインということで

さすがに沿岸では、投棄できなかったようなのであります。

が、

問題は、この禁止エリアでも投棄しながら移動するオワイ船(汚物搬送船)が

いることなのであります。

燃料の節約や海が荒れるとライン外に出れずにそのまま投棄。

ということが横行するのであります。

そして、海流に乗れなかった糞尿は、湾付近で黄色く漂い、「黄潮」と呼ばれるようになるのであります。

海女さんもしばらくは、黄色い海に潜っていたようですが

ついに我慢の限界に達するのであります。

館山市を中心とする現地の怒りは、館山のウンコを羽田沖に流すという

東京・神奈川連合軍対千葉のフン尿合戦が羽田沖で開かれる可能性を示唆するのであります。

房州の人達の苦しみの何分の一かはわかるだろう」

漁業が主産業の地域とって、死活問題でありますし、

何よりも自分たちの海を、よその東京のフン尿で汚されるのは、

「フンガイ」であり、ここはもう大きく問題にして、改善策を願うのであります。

ですが、

当時、厚生省・東京都とも、この問題解決の具体的な方法はなく、

不法投棄船を見分け、捕まえるのは困難であり、

都内のインフラは、東京オリンピックに向けて整えているので

自ずと下水道・下水処理場も・・・。いつ完成するかわかりませんが。

といった感じなのであります。

歴史的にみて、江戸時代は、なんでも再利用の時代といっても過言ではないくらいで

自分たちのフン尿も、畑の肥料としてお金になった時代でもありました。

戦前も戦中も、見る限りの雑誌には、こういった問題は、あまり見ないのであります。

そう考えると

大量生産・大量消費・人口集中のこの時代が

ゴミ・公害という大問題を生み、「日本が一番汚かった時代」という見方も

出来るのであります。

そして、また時代は流れ、分別、リサイクルの方向に向かうのであります。

このような、変化のサイクルは、様々な分野に結構有り、

この部分は、人間が学び、改善して

また良い方向に向かっている部分だと思われます。

ウンコに生活の途を絶たれた漁村。

この一文が、時代を表し意味深く、聞こえるのであります。

<時代考察参考雑誌>

1960年 昭和35年 1月 週刊現代  


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